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海外コミュニケーションの勘所【第10回】対アジアのコミュニケーション          



松本 雅利(まつもと・まさとし)

リソース・グローバル・プロフェッショナル・ジャパン株式会社

コンサルタント


米国ゲーム会社の日本法人を皮切りに、比較的外国人の揺さぶりに弱い小さな外資系企業と、仏系自動車会社など比較的大きな外資系でキャリアを積んできた。今はRGP所属のコンサルタントとして日々の 業務にあたるとともに、ビジネスパーソンのSNS、LinkedInクリエーターとして情報発信もおこなっている。



転職した同僚


 20年ほど前のことですが、当時勤めていた米系企業のアジア本社が上海にあり、何度か出張しました。そこのカウンターパートの男性は、来日してきたときは一緒に食事をしたり、かなり親密になっていました。私が上海に行って話していたときでした。自分は転職サイトに履歴書を登録していつでも転職できると、臆することなく私に語り、実際にノートパソコンを開けて登録画面をみせてくれました。

 そして私が帰国して数週間後、本当に彼は会社を辞めていました。CPAの資格も持っていましたし、英語も堪能、事務処理能力も高く、経営センスも優れているので、ひく手あまただったんだろうな、と思いました。

 日本でも転職は珍しくなくなりましたが、やはり新卒で入社した生え抜き組が主流です。自分を積極的に外部に売り込み、給与アップを図る文化はありません。 Linkedlnは転職してもその登録者とコンタクトができますが、外資系企業勤務で知りあった中国やシンガポールの知人は転職している人が多いですね。気がつくと現職が別の会社になっています。日本はリストラなどがあって、はじめて背中を押されます。アメリカでは転職は当たり前の文化があるとは、よく聞く話ですが、中国やアジアもそれに近いものがあるような気がします。

 もう20年以上前の話ですが、国営企業に勤めていた中国人が、日本語が堪能で、もっと儲かるビジネスをやりたいと言っていたことも思い出します。



中国と日本のビジネスパーソンに違いは?


 2年前に中国で書店めぐりをしたときの印象なのですが、日本のビジネス書の翻訳版もあるものの、一番多いのは米国のビジネス書でした。米国系のMBAや、ドラッカーといった日本でもお馴染みのビジネス書が並んでいました。

 今はどうだろうと思って中国で人気のある電子書籍サイトをみてみると、次のようなタイトルが目に飛び込んできます。


・『里山資本主義(藻谷浩介 NHK広島取材班著

・『戦後日本経済史』(野口悠紀雄著

・『低欲望社会』(大前研ー著


 日本の成長の鍵を探るというより、今の日本社会を知ろうとしているようにもみえますが、松下幸之助、稲盛和夫も人気があるようです。やはり起業家精神の旺盛な国ゆえかもしれないですね。

 ロジャー・ブートル著の話題作「AI経済」という、日本では発売されていない本も、いくつかの電子書籍サイトでみました。あと中国を高く買っているジム・ロジャーズの本もありました。

 ビル・ゲイツの話題の書『How to Avoid a Climate Disaster(気候変動による災害を避ける)』という本もありました。もちろん、社会主義の国ですからマルクスの資本論も目立つ位置にありましたが、トマ・ピケティ著の『21世紀の資本論』もしっかり紹介されています。

 それでも英語の本や米国のビジネス書がランクインされていないなあと思って英語の本のコーナーをみると、さまざまな、それも最新のビジネス書が並んでいました。日本は最新のビジネス書の翻訳本が1カ月、 2カ月遅れで読めるという利点があるといわれてきましたが、中国では最新の情報を原書で読み込んで、アップデートしているのです。

 それで思い出すことがあります。私が初めて中国に行ったのは35年前ですが、改革開放間もないころで、身近な海外といえば日本でした。そのため、書店に行くと語学テキストの3分の2が日本語のテキストといっていいくらいでした。それが2年前に行ったときは、ほとんどが英語のテキストで、日本語のテキストは片隅に積まれているだけでした。

 中国人は相手として米国を意識しているし、そのために使える英語を会得しているのです。

 その意味では、ビジネスで接する中国人や、広い意味で世界で15億人とも20億人ともいわれる華人とのコミュニケーションは、特に意識する必要はないのかもしれません。よく中華思想といわれますが、まったくもって意識する必要はないと思います。欧米人と同じように付き合えばよいのです。

 それは韓国人でも同じです。以前、世界規模の会議が米国の親会社であり、韓国人のコントローラーと仲良くなりました。同じホテルに宿泊していたこともあり、毎夜彼とお酒を飲み交わしました。そのとき、彼は「ソウルに来ることがあったら、声をかけてよ。いろいろ案内するよ」と言うのです。

 そのころ、ちょうど韓国の反日運動が活発化していて、日韓関係が不穏なときでした。ソウルでの反日デモも報道されていました。でも、彼日く「関係ないよ」。それは中国人でも同じです。会話においてそこに存在するのは1人の人間なのです。その人間同士の付き合いですし、それはどこの国の人間だろうが変わりません。



コミュニケーションの肝は自分をさらけ出すこと


 自分をさらけ出して話すことで、「こいつはどういうやつか」が相手に伝われば、「おもろいやつだ」となり、会話が弾むわけです。ところが、日本人は自分をさらけ出すことがうまくありません。学校で作文の授業があっても、自分をさらけ出せないから苦手な人が多いのです。ついでにいうと、自分をさらけ出すことに慣れておらず、苦手だから、外国語も得意にならないのです。

 赤ん坊を考えてみてください。「お腹がすいた」と言葉にして言えないから泣くし、だんだんと周りの大人の言葉を通して日常会話を会得していくのです。それは、内面に何かを伝えたい、何かを発信したいという強い意志を持っているからです。

 連載のなかで初めての海外出張の話を書きましたが、当時の日本法人の社長にしてみれば、こいつで大丈夫か?  と思ったでしょう。実際、そう言われました。しかし、1週間本社の人間と仕事ができたのは、英文会計の単語を心得ていたのと、受験英語とはいえ体内の奥底深く眠っていた英単語や英語表現を総動員して会話ができたからです。今にして思えば恥ずかしい限りの英語だったと思いますが、自分が発言しないと何も始まらないという追い込まれた状況がなくては、語学もうまくなりません。

 議論はありますが、自分をわかってもらうには、自分を外に出さないといけない、そのためには英語という言語は非常に大事だと思います。

 もちろん、中国人は本当に仲良くならないと自分を受け入れてくれないといいますが、自分がどういう人間かを、仕事の面であれプライベートの面であれ、しゃべらないことには相手も胸襟を開けて受け入れてくれません。ただ、ビジネスだけの付き合いなら、そこまで相手の民族性を考える必要はないでしょう。それでも、こいつと公私ともに末長く仲良くしたいと思えば、そのときは自然とそうなるものです。

 これは中国人、アジア人に限ったことではないでしょう。よく会議で日本人は黙ってばかりだといわれますが、それでは自分が認められることにはなりません。これはよく聞く話ですが、海外出張でわざわざやってきた日本人ですが、肝心の話になると「本社に持ち帰る」となるのが不思議だという話は、よく外国人の日本論で出てきます。

 海外の人間にとっては、海外にまで出張してきたのだから全権を託されていると思うのは当然です。経理・ファイナンス部門だとそこまでの出張はないとは思いますが、ビジネスパーソンとして信頼関係をもたれ、会社を代表して関係を作っているのだ、という意識を持って外国人に接するのが重要なのです。

 次回では、その根本の話をしたいと思います。

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