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RGPジャパン

海外コミュニケーションの勘所【第3回】日本で働く外国人のマインドとは



松本 雅利(まつもと・まさとし)

リソース・グローバル・プロフェッショナル・ジャパン株式会社

コンサルタント


米国ゲーム会社の日本法人を皮切りに、比較的外国人の揺さぶりに弱い小さな外資系企業と、仏系自動車会社など比較的大きな外資系でキャリアを積んできた。今はRGP所属のコンサルタントとして日々の 業務にあたるとともに、ビジネスパーソンのSNS、LinkedInクリエーターとして情報発信もおこなっている。




Far East Network

 米軍が世界各地に点在する基地で兵士向け、家族向けにテレビとラジオを放送しています。総務省所管とは違い、大出力でテレビ・ラジオを放送しているのです。今はAFNといっていますが、少し前まではFar East Network(通称FEN)と呼ばれていました。Far East、つまり東のはずれです。日本では極東ともいいますが、日本と欧米とはそんな位置関係です。

 欧米の地図をみればわかりますが、中心は大西洋をはさんで米国大陸と欧州大陸です。ここが彼らにとっての世界の中心であり、日本はというと、ヨーロッパの果ての果てなわけです(図表1)。そんな地図を子供のころからみていれば、日本や東アジアは最果ての地にみえるのは仕方がないことです。だから、日本に赴任と言われても嬉しくないというのが、日本に来る欧米人の標準的な日本への意識とみて間違いないと思います。

 もちろん、来日したら、週末ごとに国内を旅行し、先週は北海道、今週は沖縄と、有給休暇も使いながら日本をエンジョイしていた外国人もいましたし、日本の滞在は家賃から子供のインターナショナルスクールの学費、家族の日本語学校の通学費まで、すべて会社持ちというところもあります。当然給与の実費支給ですから税金も上がります。しかし、税金のアップ分も補埴され、翌年の地方税の支払も会社負担とあれば、こんな美味しい赴任先はないでしょう。給与の手取り額は変わらず、東京生活をエンジョイできるわけです。そういう欧米人駐在員のケースは、私が勤務していた東京の外資系で経験しました。

 でもそのなかでも最たるものは、この連載で何度か登場した米国系ゲーム会社勤務のときのことです。最初の経験は強烈でした。外国人の役員が「日本でプレジャーボートを買ったから、お金を立て替えて払ってほしい」と請求書を回してきたのです。

 これは出張で来た役員の話でしたが、所詮日本はそのレベルでしかみられていなかったのです。もちろん、その役員に代わって支払った分は本社に請求しました。

 私は、つくづく思うのです。 欧米人をこんなに優遇する必要があるのか? と。


幹部候補の育成の場としての日本

 結局、日本の位置づけは、高度成長期、バブル期であれば黙っていても業績が上がるので、そこで点数を上げさせるという、幹部育成のための場所ということではないかと思うのです。日本で新卒社員がまず地方の営業所や支店に配属されて何年か実務を経験した後、都市の本社に仕事の場を移していくのと同じ構図と言っていいかもしれません。

 それで思い出すのは、横浜の自動車会社にいた時です。私のいた部署には、世界中にあるグループ会社からさまざまな人が赴任してきていました。他の部署の人間が異動で来ると、別の会社のようだといっていたのを思い出しました。

 在籍時に同じ部署の人が、「グループ会社はどこも世界規模ではなく、日本に来るのはワールドワイドの会社での経験を積むためだ」と言っていて、なるほどと思いました。中核社であるR社は販売台数をみると日本で感じていたほど世界的なブランドではなく、欧州に特化した会社だったということです。

 でも、どうなんでしょうか? 金を出して優遇する必要があるのか? 日本人と同じ条件で働いてもらう必要もあるのではないか、と思ったのです。労働条件も派遣元の国の会社の条件に従うことになっていたため、破格の条件といってもよかったのです。たとえば 「有給休暇は年間30日で繰越しできない」、かつ「全日数を年内に消化しなくてならない」などです。日本人社員の待遇もそれまで自分が働いていた中小企業の外資系に比べればよい待遇といっていい内容でしたが、そこまで優遇して日本の会社に何かメリットはあったのかな、と正直思いました。まるで「お客様」扱いです。



増えている外国人労働者

 図表2のグラフをみてください。外国人労働者の数を 2008年からグラフ化したものです。2008年はリーマンショック、2011年は東日本大震災があり数は大きく伸びていませんが、2015 ~2017年から急激に増加してきています。これは、この時期、査証取得の緩和でベトナムや中国から就労者が増えたのが大きな要因です。

 そのなかでも増えているのがベトナム人と中国人です。特に中国のEV系の開発会社の多くは今横浜に本拠地を置いていますし、近年では日系のEV製造会社を中国企業が買収しました。同じく中国系IT会社も規模を拡大しています。それは第1回の連載のはじめに書いた外資系企業の動きともリンクしています。アジア、特に中国、ベトナムが伸びるのは当然といえば当然のことなのです。なかでもベトナムは、全国民の平均年齢は 31歳(2019年統計)、そして、人口の半分が30歳以下です。ちなみに日本の平均年齢は約46歳です。これまでは中国人がアジアからの就労者として捉えられてきましたが、若いベトナム人もこれから普通のオフィスワーカーとして日本の日常での風景としてみられるようになると思います。

 私は、欧米人に主張すべきときは主張すべしとこの連載で書いてきましたが、アジアの中国人、ベトナム人に対しても同様です。彼らも自分を通そうとするスタンスは非常に強いものがあります。外国人をお客様扱いにするのはもうやめて、一緒の土俵の上で仕事をすべき時がきているのです。

 その先を行っているのがプロ野球でしょう。かつては高額年棒は外国人ばかりでしたが、今はもうそんな時代ではなくなりました。球界最高年俸となる日本人選手が当たり前になっている時代です。特別枠で外国人を考える時代ではないのです。ラグビーのナショナルチームのように対等な状態で仕事をする、そんな環境を作るべきときだと思います。

 Zoom等でも簡単に地球の裏側と繋がる時代です。最初のところで地図の話をしましたが、ZoomであればFar Eastなんてことはありません。中心も周縁もない時代、どんどん主張していくべきでしょう。



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