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海外コミュニケーションの勘所【第4回】日本に来る留学生は何を思う?

更新日:1月12日




松本 雅利(まつもと・まさとし)

リソース・グローバル・プロフェッショナル・ジャパン株式会社

コンサルタント


米国ゲーム会社の日本法人を皮切りに、比較的外国人の揺さぶりに弱い小さな外資系企業と、仏系自動車会社など比較的大きな外資系でキャリアを積んできた。今はRGP所属のコンサルタントとして日々の 業務にあたるとともに、ビジネスパーソンのSNS、LinkedInクリエーターとして情報発信もおこなっている。




高田馬場駅の広告

 高田馬場駅周辺は、私が学生のころは予備校の街でした。駅を降りて右に行くと早稲田大学ですが、左に行くと予備校があり、昼間は予備校生でごった返していました。でも、今の高田馬場駅周辺は予備校に変わって日本語学校や、外国人向けの大学や大学院進学予備校が増えました(図表1)。昼時、特に下落合につながるさかえ通りは外国人、特に中国系の若い人でにぎわうこともあります。

日本語学校といえばかつては大久保が知られていましたが、高田馬場駅周辺にも広がってきたという感じです。背景としては、中国、韓国とも一回勝負の試験で進学する大学が決まってしまい、それで人生のレールがみえてくるので、ならば留学という選択肢はどうだろう、となるわけです。また、大学は妥協しても、大学院で勝負をかける人も多いようです。また、若い世代は、日本との戦争の暗い部分を、もはや歴史の授業の一コマとしか思っていない。アニメとか、明るい部分の日本のイメージもある。むろん、積極的でない理由もあります。本当は米国に行きたいがお金がかかる、とか。

    

                                                  


 でも図表2のグラフを見てください。これは平成30年に株式会社パソナが日本に滞在している外国籍留学生を対象とした合同企業説明会『JOB博AUTUMN』の参加者に就労意識調査を実施したもの。少し古いデータで恐縮ですが、日本で働きたいから日本に留学するが一番多いのです。複数回答なので日本文化とか暮らしやすいといった視点もあるでしょうが、ほとんどが日本の会社で働きたい、だったわけです。

 しかし、そこにはギャップがありました。

 ある中国人留学生。日本の大学を出て日本の会社には行ったのですが、就業時間が終わってその日にやるべきことをやったから帰ったら、怒られたらしいのです。

 日本の会社文化は外部からはよく見えません。それまでは、日本の自分にとって都合のいい所しか見えなかったのです。別に避けていたわけではないにせよ、現場の会社社会の最前線は見えませんし、アニメで触れた日本像ではないのです。千と千尋は日本の企業社会にはいません。

 しかし、そのギャップを「仕方ないよね」で済ませていい問題なのか、という思いはあります。合わせて早晩、少子化によって新卒一括採用のシステムも終わりを告げざるを得なくなります。そうなると、彼らを戦力として受け入れることも必要になります。そんなとき、これまで「これが日本式だ」と行ってきた会社社会の慣習を見直す必要も出てくるでしょう。日本の大学、大学院を卒業して日本の企業に就職したい留学生は全体の6割です。3割はその希望どおり就職しますが、残りの3割は母国か第三国での就職となっているようです。その背景には働きたくても働けない阻害要因があるわけです。


経理の仕事と留学生

 ここで、経理の仕事という点から留学生の就職をみてみましょう。

 筆者が経理の世界に入ったときは、国際会計基準の開発作業も緒についたばかりでした。経理というと、簿記検定や簿記の教科書に出てくる振替伝票用紙に勘定科目のハンコをペタペタ押して、上司の承認印をもらって国産の会計ソフトに入力していましたし、月末の総合振込みもカーボン紙を入れて作成して、その用紙を振込みの3営業日前までに銀行の窓口に提出していました。

 これでは、外国人が入り込む余地はありません。日本語がわかって、簿記検定試験の2級に受かっていないと実務は難しかったかもしれません。

 でも今は違います。会計基準もそのころのような海外との大きな違いはなくなってきました。会計システムもSAPとかOracleが普通に動いています。世界と同じシステムで、表示が日本か英語かの違いだけです。それはシステムの設定を切り替えれば、問題はありません。特に日本にある外資系企業でわざわざ日本人を使う必要はないし、システムも世界共通だから勘定科目や摘要を英語で書ければ国籍にこだわる必要はないのです。実際、私の知っている会社では、日本語のわかるベトナム人の女性が働いていました。

 それは逆手にとれば、日本人も世界に打って出ることができるということにもなります。米国のビジネスサイトLinkedlnをみていると、世界中の求人をみることができますし、条件さえ合えば、そして国境を越える覚悟さえあれば、経理パーソンの舞台は世界に広げることができるのです。

 話をもとに戻します。日本は少子高齢化が進み、就業人口はこれから減少の一途をたどって行くことになります(図表3)。  そのとき、経理部門は、世界共通言語である会計の心得のある人を候補者にすることができるわけです。でも、悲しいかな、日本に留学に来た学生でさえも 日本で就職できる人は30%しかなく、これでは、世界から優秀な会計経理パーソンを集めることは並大抵ではできません。逆に日本人の優秀なビジネスパーソンも他国に奪われることもあるかもしれません。

 少子高齢化が進むこれからの時代、新卒一括採用、ゼネラリスト志向の人事方針、いまだに根強い年功序列賃金制度、付合い残業、休むことに否定的なニュアンスなど、日本社会全体でも見直しの機運が高まっています。これらの点の改善なしには、生き残るのは難しいかなと思ったりします。これらの制度は、いわば軍隊と同じで、集団で競わせてはい上がった者を幹部にしていくもので、昭和、高度成長期の遺物でしかありません。日本式をすべて否定する必要はないですが、見直していき、変えていく必要があるように思います。

 そして、それは経理というよりも日本の会社・社会が早急に克服し、変えていかなければならない点とも思います。そういう意味で、コロナ禍は日本の会社や社会文化とは何かを考え、変えていくいいきっかけになったような気がします。


【参考文献】九門大士著『日本を愛する外国人がなぜ日本企業で活躍できないのか?』(日経BP)



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