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海外コミュニケーションの勘所【第5回】「締め切りを守る」の考え方

更新日:1月12日


松本 雅利(まつもと・まさとし)

リソース・グローバル・プロフェッショナル・ジャパン株式会社

コンサルタント


米国ゲーム会社の日本法人を皮切りに、比較的外国人の揺さぶりに弱い小さな外資系企業と、仏系自動車会社など比較的大きな外資系でキャリアを積んできた。今はRGP所属のコンサルタントとして日々の 業務にあたるとともに、ビジネスパーソンのSNS、LinkedInクリエーターとして情報発信もおこなっている。




本社へのレポートの締め切りで・・・

筆者が米国系ゲーム会社のマネージャーになって、はじめて本社への月次レポートを作成していたときのことです。

「そんなに根を詰めないで、とりあえず中途半端と思っても、まず締切の日に送ればいいんだよ。最初から完璧版は期待されていないんだから。締切を守ることが大事なんだよ。」

同じ会社にいた日系米国人の社員がくれたアドバイスです。おそらく、はじめてのマネージャー職で完璧なものを仕上げようと残業をしていた自分に、そこまでしなくてもいいんだよ、という意味で労ってくれたのだと思います。今のようにERPではなく日本の会計ソフトを使い、マニュアル作業も多い時代でした。まして、外資系の場合、締切が早いので、お昼を食べるのもそこそこに処理作業を続けていたのです。

 彼はさらに言います。

「最初から完璧なものを送ると、次は要求がさらに増え、ハードルが上がるし、それはさらに自分に負荷がかかってくる。肩の力を抜いていけばいい。そのために締切は早く設定してあるんだよ。」

米国本社が相手にする関係会社は世界中にあります。担当者の英語力、会計力、事務処理能力も一様ではないのです。熟練度も違います。もちろん、採用時には、外資系の場合、本社のカウンターパートとなる社員が採用のプロセスに絡みますが、スキルに関してすべてを完璧に把握はできません。もちろん、そうはいってもそのときはちゃんと仕上げたつもりで月次報告のパッケージを送りましたが、数日間、本社からの質問のメールが来てその対応に追われました。でも、そういった対応を続けていくことで質問も次第に減っていきました。相手が報告書に求めるポイントが分かってきたからです。


完璧主義

非の打ち所がないように仕事をするために、時間をかけて、ああでもないこうでもないと議論したり、考えて仕事を進め、報告書を作成したりするのは大事です。でも、その議論のベクトルが得るべき結論とは真反対であったために、間違った報告書になることもあるかもしれません。

 月次の報告にしても、エクセルで違うシートや違う行に数字を入れていたら、整合性が取れなくなります。そういうときのために、チェックリストのシートがあり、間違ったところに数字が入るとその該当箇所のチェック欄が☑マークではなく、Error表示になったりもします。ところが、それが試算表式チェックリストの場合、たとえば長期借入金と1年以内返済長期借入金が並んでいたりすると、貸借が合致し、☑マークが入ってしまいます。そして、レポートのチェック先の本社担当者から確認のメールが来て初めて計算のミスに気づくわけです。締切りのためにあせると犯すミス、得てして単純なケアレスミスだったりするわけです。でも、こういった誤りを繰り返さず、報告書作成の勘所を、月を追うごとに抑えていけばいいわけです。その代わり締め切りは常に意識します。

 最近はビジネス書でも「完璧主義をやめよう」といった内容のものが多いですね。ネットで検索してもかなりの数がヒットします。ちなみに筆者がGoogle検索すると約12,900,000件ヒットしました。それだけ、日本のビジネスパーソンがその殻を破ることを意識している証左ではないかと思います。  筆者は「英語」に対しても同じことを感じます。これは筆者自身も実感することなのですが、英語を喋るとき、心のどこかに「間違っていたらどうしよう」という不安があるのです。ある意味で受験英語の弊害でしょう。ちょっとした英語の文法の違いで減点された記憶が、コミュニケーションの場でもフラッシュバックするのです。                         

 図表をみてください。英語を話す人の75%が非ネイティブなのです。

 たとえば、米国そのものも、移民でできた国です。 筆者が米国人と話して感じるのは、相手の話す言葉で何を伝えようとしているのか、必死になって探ろうとしている姿勢です。それは一口に米国人といっても英語の力は千差万別で、おそらくそれが社会の普通のコミュニケーション手法なのかもしれません。米国のホテルでテレビをみると、さまざまな言語の番組、チャンネルがあり感心させられます。米国市民権を持った人でも、英語が得意とは限らないのです。

 でも、日本人はどこか心の奥底に「自分の英語が間違っていたら恥をかく」という思いがあるのです。大学受験で英単語もかなりの数を覚えたはずなのに、脳裏の奥底に仕舞い込んで「自分はできない」と思い込んでいます。

 筆者の英語に対する呪縛が解かれたのは、冒頭にも書いたゲーム会社の本社があるニューヨーク(といってもニューヨーク州の郊外の市です)に出張したときです。1週間の予定の出張だったのですが、会社サイドは筆者の英語力に不安を覚えたのか、通訳をつけてくれました。米国の生活事情など通訳の方から聞けて、それはそれで貴重な話でありがたかったですが、やはり自分にとってメリットがあったのは、出張滞在期間が延び、延長の2週間、1人だけになったときでした。Google翻訳もない時代です。自分の言いたいことを自分の英単語の引き出しから総動員して、とにかく議論しました。相手の言うことがよくわからなかたら、あなたの言いたいことはこういうこと?と自分の言葉で聞き返します。そして自分が言ったことについては、相手がうなずけば理解したと判断して議論を進めるのです。

 もう英文法のことなんかにかまう余裕はありません。とにかく次から次へと相手から飛んでくる英語に飛びついて答えていきます。それを2週間も続けると、さすがに耳も慣れ、言葉もスムーズに出てくるようになりました。

 一度だけ会社の好意で週末をニューヨークの郊外のホテルではなく、マンハッタンのホテルで過ごしたのですが、街で普通に会話できている自分に驚いたものです。その時点で筆者のなかで、こと英語に関しては「完璧主義」は消え去っていました。

 ビジネスであれ、英語であれ、最初から完璧を目指さず、誤りがあれば直していき、同じ誤りは繰り返さないのが大事です。変に完璧主義を意識しないほうが、結果的によくなるのだと思います。

 


約束は守る

 英語の話になってしまいましたが、「締切という約束は守る。その一方で完璧主義を取らない」という姿勢は、いい加減でよいということではありません。締切までにでき得る限りのことを行い、誤りを指摘されたら次回以降その誤りを繰り返さないようにします。そうすることによって、報告書作成のスキルが上がり精度も高まり、本社担当者との意思疎通もうまくいくようになるのです。特に会計処理とは違い、月次報告のやり方は会社によってそれぞれに違いがあり、ルールがあるため最初から満点は無理な話なのです。でも。締め切りの意味はどの会社、組織でも同じです。

 これは、致命的にならなければ、という限定句付きですが、手を抜けるところは抜くというのも必要です。先月より今月に余裕が出てくれば、前月スルーしていた点も締切前に見直しができるようになるわけです。




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