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海外コミュニケーションの勘所【第9回】経理パーソンにとっての英語とは          



松本 雅利(まつもと・まさとし)

リソース・グローバル・プロフェッショナル・ジャパン株式会社

コンサルタント


米国ゲーム会社の日本法人を皮切りに、比較的外国人の揺さぶりに弱い小さな外資系企業と、仏系自動車会社など比較的大きな外資系でキャリアを積んできた。今はRGP所属のコンサルタントとして日々の 業務にあたるとともに、ビジネスパーソンのSNS、LinkedInクリエーターとして情報発信もおこなっている。



あらためて英文会計

 私が英文会計という世界があることを知ったのは、小島義輝先生の『ビジネス・ゼミナール 英文会計入門』(日本経済新聞社)に書かれていた、このようなくだりです。


 円高は、これからも一層進行する。日本が成功すればするほど、円高になるのが経済の法則である。これに対処する方策は、ただ一つしかない。それは、日本企業が世界企業に向かって、急いで進化することである。

 日本語の会計学知識だけでは、ボーダレスの世界の動きについてゆけない。海外への投資と資産の運用、国境を越えた企業買収、買収した企業の管理、現地国での経営など、重大な戦略局面で、英語がすらすら読み書きでき、しかも会計に詳しい多数の人材が必要になる。ところが、そんな人材が日本では底をついている。せっかく海外に留学しても、会計学を専攻する若者は少数派である。このため、企業の最大の悩みである金銭問題に、真正面から対処できる人材は極端に不足している。もし、英文会計のタレントがあるなら、どこからも引っ張りだこで、国際企業の奥の院で活躍するのも、海外で企業を担うことも、当人が希望さえすれば実現する。


 この本が書かれたのは1993年で、バブルの崩壊が始まったころです。それでも東京23区の地価で、米国のすべての土地が買えるといわれ、ニューヨークの象徴といってよいロックフェラーセンターが日本企業に買収されたなど、そういった経済ニュースが当たり前だった時代の残滓が色濃く残っていました。

 私もこの本を読みながら、外資系のテレビゲーム会社に勤務していたので、背中を押されるように英文会計のキャリアを積むことになりました。そしてやってみると、確かにいろいろな国の人と知り合いになりましたし、親会社との関係にみる意識の差や、ビジネスパーソンの考え方がわかったりして、よい経験だったと思っています。本連載もその経験がベースになっています。

 しかし、ここで書かれている日本の経済環境は大きく変わりました。中国が第2位の経済大国になり、日本の経済的地位は低下し、中国のプレゼンスが非常に大きくなりました。

 こうなると、日本の企業は内向きになり、何も無理して英語を勉強することも、ましてや英文会計を勉強することもないのではないか、と思ってしまいそうですが、実際はそうではないようです。今も日本の企業は積極的に海外に投資を行っているのです。

 2019年の日本企業の関わった買収案件の買収額トップ10をみると、日本企業同士のM&Aもありますが、10のうち5つは対海外企業です。断片的なニュースとしては記憶にあっても、こうしてみると、バブルのころに比べれば円安に振れているにもかかわらず、日本企業の海外投資は旺盛といえます。

 また、海外の企業がM&Aで日本の企業を買収することもあります。特にアジア企業の動きが活発です。シャープ(株)が台湾の鴻海精密工業に買収されたことは記憶に新しいですし、私の身近でも日本企業が作ったEVバッテリーの会社が中国企業に買収されました。 Linkedlnというビジネスパーソン向けのSNSの求人コーナーをみると、アジア系企業、なかでも中国の企業が活発に日本で経済活動を展開しているのがよくわかります。

 そんなとき、ポイントとなるのは経理部門が取りまとめる数字なのです。これは私の実感なのですが、経理の仕事は、ロジック自体は万国共通で数字は同じです。海外の関係会社が求める数字が何かを理解し、データを提供し、時として説明を求められればきっちりとそれを果たすのです。経理のことをAccountingといいますが、原義はラテン語で「説明する」という意味です。そこでまとめられた数字を、株主なり経営幹部から聞かれたら、それを説明できることなのです。

 この連載を読んでいる方には釈迦に説法かもしれませんが、日本語で当たり前にやっていることを英語でする、勘定科目と基本的な会計用語の英単語さえ覚えれば、さほど難しい話ではありません。他の職種と違って会計経理の職種では、他国との垣根はさほど高くないのです。英語はまた英米の母国語というよりも世界の共通言語になってきています。華人系の方でも英語が話せれば仕事はできる、そんな時代なのです。


会計人にとっての英語

 前述の小島義輝先生の主宰された英文会計の通信講座では、高校生用の会計経理の教科書を読まされましたが、今にしてみればその意図がよくわかります。私なりにまとめると次のようになります。


  1. 日本語で会計経理を熟知していれば、英単語でわからない単語があっても類推で判断できる。

  2. 米国の会計に流れるロジックを学べる。

  3. 高校生向けなので英語自体難解でない(基本的な会計用語が学べる)。

  4. 難解ではないとはいえ、電話帳のように厚い英文会計の本を読破することで英語に対する自信がわく。

  5. 英語コンプレックスを払拭できる


 そして次に大学初年度に読む会計本、そして米国公認会計士の問題集、と進めていく流れでした。米国系ゲーム会社でマネージャーになったとき、会社から英会話の学校に通いなさい、お金を出すよといわれたのですが、私は小島先生の本を読んでいたので、先生の私塾の通信制の英文会計のコースを受講しました。そこで、ビジネスではそこそこ仕事ができる英語が身についたと思っています。

そういった専門領域の英語を習得したあとに英会話を勉強しなさいと、小島先生は別の本で書かれています。英会話学校では、いろいろなシチュエーションの会話を勉強しますが、会計の世界の専門用語を知っていなければ財務諸表を読むこともメールを書くこともできません。やはり、そこから入らないと仕事で使える英語は身につきません。そのあと会話の勉強をすればよいわけです。ちなみに私は英会話学校へは行っていませんが、昔から海外放送と映画でリアルな英語を学んできました。そして今はやはりインターネットです。英会話学校に通う必要がないほど充実しています。以下はその一例です。

① Bloombergラジオ

ご存知、Bloombergは米国の金融系ニュース会社ですが、ここは24時間ラジオ放送を流し続けています。もちろん、会計と金融は分野は違いますが、企業ニュースの業績など会計英語を習得して、そしてあらかじめ日経新聞などで情報として知っていれば、聞き取りもそんなに難しくないと思います。

映画

ビジネスを舞台にした映画はとてもよい素材と思います。最初は字幕なし→日本語字幕→英語字幕→字幕なしと、これをループのように繰り返すのです。私もまだ映画のネット配信のないころ、DVDを入れたノートパソコンをカバンに入れ、片道1時間半の通勤の間、上記のプロセスを実践していました。何度も聞いていると、そこでの会話の言葉が泌みるように自分のものになるのがわかりました。最近ではビジネスを舞台にした映画は少なくなりましたが、動画配信サービスなどで、面白いビジネス系のテレビドラマを見つけるのもいいかもしれません。その際は英語字幕が入ったものがマストです。

グローバル時代、日本のベンチャーをGAFAの会社が買収する話などを聞きます。技術力のある会社であれば、突然大手の外資からコンタクトがあり、外資系企業に加わることもあり得ます。英語での経理は大手だけの話ではないのです。




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